審査員より一言

 

 

※敬称略 五十音順

東 誠三

第26回ヤングアーティストピアノコンクールに、審査の一員として参加させていただき、若い皆さんの演奏から、たくさんの刺激と学びを得ることができました。このコンクールの優れた点は多くあると思いますが、自由曲で参加でき、また比較的長い時間、良いホールで演奏をする事ができる、という点があると思います。自分の楽器を持ち歩くことのできないピアノ演奏という分野では、様々な環境にすぐ適応できる能力が必須である事は容易に理解できると思いますが、その経験を積むには、真剣に準備したレパートリーを、なるべく多く、できれば良い楽器と環境のもとで演奏するしかありません。そのような経験を積むのに、このコンクールはうってつけの機会のように思われます。
また、本選の国立オリンピック記念青少年総合センターの大ホールはスペース、音響の点で大変優れていると思います。こうした大きな空間で、どれだけ普段心に思い描いている音楽が表現できるか?。コンクールは全国各所で開かれていますが、これほどの大きな空間で弾くことのできる機会は、特に都会においては大変貴重です。
今後、このコンクールをきっかけに、大きく羽ばたいていく若い方達が益々増えていくことを、楽しみにしております。

石川 哲郎

20年を超える歴史を刻むヤングアーチストピアノコンクールに比較的早い時期から審査員として携わって参りました。その時間の経過のなかでの所感を若干述べてみたいと思います。
コンクールに参加することの意義は参加者の年齢によって若干異なるように思います。園児や小学校低学年の参加者に「大人のような」演奏は望むべくもなく、また望むべきではないでしょう。ただただ「年齢にふさわしい」自由で伸びやかな表現が望まれます。
ヤングアーチストピアノコンクールの大きな利点である素晴らしい会場と楽器による演奏、参加者のそれに至るまでの努力と心構えが演奏の瞬間に発露されるわけですが、そのことによって音楽のみならず、日常における感じ方や感情表現が格段の変化を遂げることがあります。これはまさにコンクール参加の醍醐味と言えるでしょう。
自我が確立された年齢層の参加者には審査員のコメントが自己確認あるいは自己評価の一助となるでしょう。ここではこのコンクールのさらなる特色である「評価の公平性」にたいする不断の改革努力が効力を発揮しているようです。このことは近年とみに巷間語られることも多く、これに対する信頼が参加者の意欲をいっそう掻きたてているように感じます。
参加者の「真の」音楽的発展が当コンクールの目的と感じています。

今井 彩子

コンクールはどういう結果になっても、 少しずつピアノに向き合った事や、準備の過程で気づいた事、そして本番でのステージ体験が必ず次への力になってくれます。
ヤングアーチストピアノコンクールは自由曲制ですが、等身大の選曲が多く、みなさんそれぞれの音楽への向き合いが演奏から感じられて私も刺激を頂いています。
年齢によって細かくグループ分けがあるので同世代の人と良いホールで演奏できる事、またSグループでは長いプログラムを弾けるのも魅力だと思います。
夏休みを利用して、良い音楽体験が出来るコンクールだと感じています。

落合 敦

これまで複数のコンクールの審査に携わってきましたが、ヤングアーチストピアノコンクールにはとてもポジティブな印象を持っています。
まずコンクールにありがちな「闘志を剥き出しにする」「熾烈な上位争い」といった雰囲気がありません。参加者それぞれが自らの音楽に没頭して、臆することなく自己表現し多彩な表情を見せてくれることに清々しい感動を覚えます。
審査員が個性あふれる若い演奏者ひとりひとりを尊重し、公平性のある審査を長年に渡り続けていることも、多くの方に信頼され年々盛大に開催されている所以でもあるでしょう。オリジナリティを充分に認められ評価を受けられる事は、若い演奏者にとって貴重な経験です。
若者が自分自身の輝ける何かを見つけることが難しい時代になったと言われて久しい今日、無限の可能性を秘めた多くの若いピアニストがさらなる飛躍の場としてこのコンクールに集い、成長していかれることを願っています。

菊地 麗子

最近多くなったピアノコンクールの中でも、30年近くも続き、しかも年々発展している貴コンクールの審査を長年させて頂き光栄です。
年齢層の幅が広く、又課題曲や自由曲等選曲し易いことも人気の一つだと思います。最近では才能豊かな素晴らしい演奏に出会える事もあり、ピアノ界にとって明るい未来を感じました。又私の門下付属高校生にとっては、丁度開催時期がよく、試験の為の「度胸試し」になっており、信頼のおける審査員からのコメントも参考にさせて頂いております。私も審査員として、演奏に対するアドバイスを、通常のレッスンで注意していることを、言葉で言うのは難しいと感じつつ、私なりに書かせて頂いております。皆様の演奏のレベルアップの参考にして頂ければ幸いです。今後の更なる発展を祈念しております。

倉沢 仁子

人は何故音楽に魅了されるのでしょうか?
皆さんはピアノを習い始めてから毎日努力を重ねていらっしゃいますね。ある程度基礎力がついたら今度はぜひ本番というステージで弾いてみましょう。そこでは練習室ではわからなかったこともたくさん見えてきますよ。普段と全く違った空間に置かれた違った楽器を前にして日頃努力してきた成果を発表してみましょう。きっと未知の国を旅するかのような新鮮な発見や驚きに感動することでしょう。
一つのステージに至る為には色々な人達とのいきいきしたコミュニケーションが生まれます。中でも参加するために集まってくるお友達は大切なライバルです。演奏は自分の心との戦いではありますが、良きライバルとの切磋琢磨することによって一層成長できますね。そして一つの本番で得た達成感はその後の人生におけるさまざまな局面での自信となりさらなる飛躍になるでしょう。
この夏のヤングアーチストピアノコンクール参加者の方々たちの水準はパワーに溢れた高いものでした。来年もまた私達、審査員を惹きつけてくれるフレッシュな才能に出逢えるのを楽しみにしております。

小高 明子

小中学生は場慣れのために、高校生は、春学期試験の前に、 大学生は、1曲仕上がった時に、完成度を確認するために。 毎夏のヤングアーチストコンクールに、私の門下生達は助けられております。
経験豊富な先生方のアドバイスは、的を得ており、学生達は元より 私にも刺激を与えてくださいます。 そして何よりも、一楽器店さんが主催するコンクールが25年以上も続いていることに、とても驚いております。
それは、運営を支えていらっしゃる スタッフの方々の大変な努力があったこそであろうと、感じております。 運営スタッフ、審査員の先生方に感謝し、来年度もまた、ヤングアーチスト コンクールに、門下生を参加させたいと思っております。

近藤 伸子

世の中には様々なコンクールがありますが、ヤングアーチストコンクールは、響きの良いホールで演奏できる点、比較的長時間演奏できること、自由曲選択性であること、2台ピアノ部門やコンチェルト部門などニーズに応じた様々な部門があること、そして受賞者にはコンチェルトを演奏する機会が与えられる点などが参加者にとって大きな魅力となっているのでは、と思います。
コンクールは、受賞を目指すこと以上に、場数を踏み緊張感との付き合い方を学ぶ、会場と楽器の響きに適応する能力を磨く、レパートリーを増やす、他の人の演奏から刺激を得る、本番に向けて曲の完成度を高めコンディションを整えるスケジューリング能力の向上、など様々な事を学べる貴重な機会といえます。
是非コンクールを一つのステップとして、講評も有効に活用しつつ、ご自身の音楽表現を深めて頂きたいと思います。作品の真髄に迫る素敵な演奏に出会える事を楽しみにしております。

櫻井 美佐子

ヤングアーチストピアノコンクール発足当初より、企画・審査に携わって参りました。今年は記念すべき第25回を無事に終えることができ、ホッとしております。あっという間の25年間でしたが、その間にいろいろな演奏に出合うことができてとても嬉しく思います。小さいお子さんが舞台で一生懸命に弾いていらっしゃるのを聴いていると「本当に良く頑張りましたね」と、はなまるをつけたくなります。ある時は先生のご指導の元「よくそこまで表現できました」と感心させられます。
またある時は、思わず聴き入ってしまい講評を書くペンが止まってしまうほど感動してしまいます。それぞれの出演者さん達の将来(未来)の姿を想像しながら、またの機会に聴いてみたいと思うのです。
心に残るエピソードを1つ書きたいと思います。国際コンクールにも何度か足を運び聴かせていただいていますが、その中で2009年に開催された浜松国際ピアノコンクールで、ある1人の男の子(当時15歳)の演奏に出合いました。その時の感動、特に音色の美しさが忘れられず、ポーランドまで聴きに行きました。6年経った彼はすっかり成長なさっていて、会場の皆を魅了する、もはやピアニストでした。彼の優勝を確信したひとときでした。

佐々木 崇

私自身、高校生の時、ヤングアーチストピアノコンクールに参加し、金賞を頂きました。その時は、賞をもらったことはもちろん嬉しかったのですが、自分の音楽性を追求して仕上げてきたものがようやく認められたという嬉しさのほうが強かったのを覚えています。そしてこの時の経験が、今の私の「演奏する」という活力の源となっています。 コンクールというのは結果がすべて、と思われがちですが、音楽の良し悪しの判断はそう単純なものではありません。演奏という行為の本質は、誰かに聴いてもらい、そしてそれをまた聴きたいと思わせるように人を惹きつけられるものであるか、にあると思います。 是非、このコンクールによってご自身の音楽性を発揮し、それが認められるきっかけとなることを期待しています。

澤田 勝行

こんにちのコンクール隆盛は目を見張るものがあります。最近は演奏家への登竜門だけでなく、ステージ経験のために参加する方も増えてきています。賞を狙うのは当然ですが、将来音楽家として大成するためにコンクールを勉強のために活用することも良い手段だと思います。目標があればそこに向かって一層の努力をするし、それが本人のかけがえのない糧として蓄積されれば、十分に目的は達成されたと言えるでしょう。

重松 聡

毎年さまざまなコンクールの審査に関わっていますが、ヤングアーチストピアノコンクールでは、課題が自由曲であることから、参加者それぞれが、実力と個性に合った曲目を、良いホールで伸びやかに演奏しています。よって、会場は競い合う場というより、発表会や演奏会の雰囲気もあり、私自身、こども達あるいは若者たちのひたむきで瑞々しい演奏に聴き入ることもしばしばです。半面、審査する立場としては、異なる曲目の演奏に対して優劣をつける事の難しさも痛感しますが、こうした場から、未来の輝かしいピアニストが生まれること、また緊張感をもって日々の努力の成果を発表することが、全参加者にとってこの上ない成長の節目となることを確信し、気を引き締めて採点、講評に当たっています。

武田 真理

ヤングアーチストピアノコンクールも今年で21回目を迎えました。毎年審査員として聞かせて頂くのは楽しみです。
予選 セミファイナル ファイナルと勝ち残っていくのは容易ではありません。毎年確実にレベルも高くなっています。
今のどのコンクールにもいえる情況ですが、皆同じようにある水準をこなしているのです。そこで優劣をつけるのは審査員としては大変なところです。どういうところで点数をつけているのかというとやはり演奏者のメッセージが届くか届かないかということは一番のポイントです。ミスをしたから 音をはずしたからということでマイナスしていくということではなく、もっと本質的なところを捉えていきたいと常に心がけています。本当に心に届く演奏に出会った時はこんな嬉しいことはありません。毎年それを楽しみに審査しているかもしれません。演奏は聴衆がいてこそ成り立つものです。コンクールも本番の一つとして考え、おおいに皆さんの成長の場になることを願っています。

大導寺 錬太郎

今から20年以上前にこのコンクールを知り、当時は随分と生徒がお世話になったものです。それからどんどん参加者のレベルが上がり、コンクールの内容も充実してきました。特にご褒美にコンチェルトがあるのはとても励みになり、良いと思います。 昨年は思いがけず、社会人となった生徒と協奏曲部門を受け、久々に新鮮な緊張と充実感を味わうことができました。 「100回の練習より1回の本番」とは良く言われる言葉ですが、素晴らしい会場・ピアノでソロに限らずいろいろな経験を積めるヤングアーチストピアノコンクールは貴重な存在と言えるでしょう。 コンクールはどうしても競争の要素が強くなりがちですが、他人との比較より自分自身がどれだけ成長できているかを確認する場でもあるはずです。 自分に負けずピアノに取り組まれることを望みます。

西川 秀人

ピアノを上達する為には勿論日頃の練習や努力が欠かせませんが、やはり人前で演奏をして聴いてもらう事もとても重要ですね。しかしいざステージに立つと緊張してしまってなかなか思うような演奏が出来ないものです。
これはピアノを習ってる人誰もが経験する事と思います。それを克服するには少しでも多くの機会を作ってステージに立つのが一番良い方法でしょう。
幸いヤングアーチストピアノコンクールは何度か挑戦する事が出来、最初は上手く弾けなくてもそれを生かして再度チャレンジする事が出来るシステムです。又、審査の先生方の書かれた講評もとても参考になりますので多いに活用して頂きたいと思います。

永岡 信幸

ヤングアーチストピアノコンクールでは、よいホールと楽器、よく考えられた審査方法等、参加者の皆さんが存分に力を発揮出来るための環境が整えられています。
楽譜を読むことから作曲者の思いを深く理解し、それを自分自身の音楽として聴き手に伝えるのが演奏です。まさに演奏者と聴衆のコミュニケーションと言えるでしょう。年齢やカテゴリーに関わらず、舞台から発せられる心からのメッセージに触れた時、私たち審査員はこの上ない喜びを感じるのです。
皆さんがこのコンクールで、その何にも代え難い経験をなさり、広く羽ばたいて行かれることを心から願っています。

羽田野 英子

ヤングアーチストピアノコンクールの審査に携わらせていただき、毎回たくさんの若い人たちが情熱をかたむけてピアノに向かう姿を、誠に頼もしく思っております。ステージでは一人ずつが輝き、どのような個性や才能に出会えるのか、いつもわくわく期待しながら聴いています
自分自身の感性を研ぎ澄まし、ホールという広い空間で演奏することは、年齢やピアノ歴を問わず貴重な経験となることでしょう。真剣に取り組むことで音楽の奥深さを知り、次へのステップとなります。それは音楽のみならず人の生きる力に通じるもので、きっと将来の社会にも役立つことでしょう。
ピアノは素晴らしい楽器です。その響きやニュアンスは無限にあります。楽譜を通して作曲家の思考に想いを巡らせて、これからも皆様に素直な心で楽しんで演奏していただきたいと願っております。

古川 五巳

私は第1回ヤングアーチストピアノコンクールから関わっていますが、現在に至る迄大きな発展をしてきました。その中で変わらないのがこのコンクールのもつ音楽に対する姿勢、考え方です。審査過程での審査員達の偏らない考え方による審査結果など、数あるコンクールの中でも良識あるピアノコンクールと言って良いと思います。
コンクールは良い結果が出て初めてその価値があります。しかしコンクールで良い結果が出たからと言って音楽の勉強が終わる訳ではありません。そのためにはいかにコンクールを上手に利用するかです。選んだ曲を決められた期日迄に仕上げるための勤勉さは、ピアニストには欠かせない要素であり、また将来の大切なレパートリーになります。考えればまだ他にも様々な良い点があると思います。結果に一喜一憂するのは仕方ありませんが必ず自身の成長をどこかに見つけるような気持ちで参加して下さい。

山田 彰一

ピアノという楽器には、独りで練習し、独りで演奏して完結してしまうようなところがあります。でも音楽は人と人とをつなぐもの。演奏する人の思いを他の人に伝えることができれば一層価値が高まるでしょう。
コンクールに参加すると、どうしても優劣ばかりが気になってしまいます。でも、聴いている人にどの様に伝わったかを知ることも大切です。
それができることがヤングアーチストピアノコンクールの魅力のひとつです。
専門的なアドヴァイスが書かれた講評を役立てて頂ければ幸いです。また、お友達の演奏を聴くことによって、より客観的に自分自身を評価できるようになることも、更なる成長の糧になるはずです。
毎年チャレンジして、技術と教養を磨いて演奏の質を高めると共に、自分の主張を込めた、個性豊かな演奏を目指してください。楽しみにしています。